タクシー帰りをして家に入ろうとしたら、
ドアが開かない。
玄関ドアには上下2つの鍵があって、
ぼくが帰る日は上の鍵だけかけてある。
んなこと書いていいのかとも思うが、
今日はなぜか上下とも施錠されている。
ぼくは下の鍵は持っていない。
もちろん、
母はとっくの昔に夢の中だ。
とはいえ背に腹はかえられん。
母の携帯に電話する。
んが。
すぐに留守電モードになるではないか。
かくなればと、
自宅にかけてみる。
ドア越しに電話が鳴っているのは聞こえるが、
母が起きる気配はなし。
これって、
シ・メ・ダ・シ?
少し焦りが入ったぼくは、
勝手口がひょっとして鍵が開いているのではと、
そちらへ行ってみたが、
母の戸締りは万全だ。
締め忘れはない。
それは普段なら結構なことだが、
今日のぼくにはとても困ったことだ。
理由はともかく、
自分の家なのに入れないという感覚は、
なかなか虚しい。
何度か母の携帯や自宅にかけ、
無駄だと思いながらドアをどんどんしてみた。
すると、、、
家の中の明かりが灯った。
やれやれである。
寝ぼけ顔の母がドアを開けた。
「あんた何してんの」
母はぼくが会社に泊まると勘違いしていたらしい。
カレンダーにもそう書いてある。
いやいや、
よかったよ。
単なる勘違いで。
でもこれからは、
下の鍵も携帯しようっと。