先日のNHK「プロフェッショナル」は、
料理家の栗原はるみ。
なんだかプロフェッショナルという言葉と、
ちょっと違うんじゃないの、
ネタに詰まったか?
なんて思いながら見たのだが、
結論から言うと、
彼女はまさしくプロフェッショナルだった。
というのも、
ぼくが考えるプロフェッショナルの条件はただ一つ。
「期待に応え続ける人」だ。
4000種類ものレシピを考え、
2200万部もの料理本を売った彼女は、
そういう意味で紛れもなくプロだ。
しかしこの番組で気づかされたのは、
普段何気に見ている料理のレシピの難しいこと。
彼女が自分に課しているハードルは、
「初めて料理する人でも美味しくできる」ということだそうだが、
このハードルはとてつもなく高い。
大さじ小さじの量の問題はもとより、
火加減にしても「強火」ったて様々だろう。
読者の家庭にあるコンロの種類は様々だし、
強火はとりあえずそのコンロの最大限の火力だとしても、
「中火」ってなったら千差万別ではないか?
米にしたって、
銘柄も違えば炊飯器も違うし、
炊きたてか冷えているかでも全く異なるだろう。
現に、
番組で紹介していたタルトタタンっていうデザートにしても、
使うリンゴは紅玉じゃないと駄目だったし。
思えば料理のレシピっていうのは、
たとえば自転車の乗り方を文章にするような、
要するに本質的に不可能な作業だと思う。
99パーセントまでは文章化できても、
残りの1パーセントは無理で、
しかもその1パーセントにこそ、
物事の本質があるはずだ。
そう考えた時、
彼女のレシピがかくも大きな支持を得ている理由が見えてくる。
きっと彼女のレシピは、
自転車にたとえるなら補助輪のようなものなのだろう。
書いてある通りに作ったら、
とりあえず美味しいものが出来て、
「料理って楽しい」っていう気分になれるに違いない。
つまり、
補助輪付きとはいえ、
文章で自転車に乗せてしまうのだから、
やっぱりプロフェッショナルなのだよと、
納得した次第。
今度彼女の本を買って、
母に押し付けよう。