電子版Forsightを読んでいたら、
依田加代子という科学ジャーナリストが、
日本の安全管理は欧米より30年遅れていると指摘している。
だから福島原発のような事故が起きたのだ、
と言いたいわけだが、
こういう主張は正しいとしても危険だ。
なぜならば、
こういう議論の土俵に乗ることはつまり、
「安全管理を欧米並みにすれば原発はOK」という、
原発推進の立場を知らず知らず表明していることになるからだ。
欧米の安全管理がそんなに優秀なら、
なぜ金融危機が世界を揺るがしているのか。
日本はご指摘のように遅れているかもしれない。
でも欧米だって、
そんなに優れているわけでもない。
そこを忘れないことが肝心だ。
だれもが生きている限り、
死のリスクを負っている。
毎日、
自転車に乗って駅まで行き、
電車で大阪まで出て、
会社まで地下街を歩いて出勤する。
そのデイリーワークの中にだって、
考えてみれば至る所に「死」のリスクは潜んでいる。
車にはねられるかもしれないし、
電車が脱線するかもしれない。
頭上からビルの看板が落ちてこないとも限らない。
気のふれた男が包丁で刺してくるかもしれない。
でも、
そんなこといちいち考えていたら、
一歩も外出できないし、
また家の中にいたって大地震がくれば、
命の保証はない。
話がそれたけど、
言いたいのは、
人が生きている限り様々な「死」のリスクを背負わないといけないわけだが、
原発事故のリスクは、
あえて背負う必要がないということである。
福島原発事故でそのことに気づけば、
これまでの日本の安全管理がひどいとかいう議論は、
もはや意味がないということがわかるだろう。
事故確率がゼロにならない以上、
原発の増設は認めてはならないし、
迅速かつ速やかに、
運転中の原発も止めるべきだ。
原発に関する限り、
安全管理の技術的な議論には乗らない。
相手の土俵に上がってはいけない。
●木曜日は元町寄って会社にゴー。