2013年1月8日火曜日

冷血

年末から読み始めた「冷血」(高村薫著、毎日新聞社)を、
年をまたいで読み終えた。

2002年12月、
ネットで知り合った30代男二人が、
歯科医一家4人を殺害するという、
陰惨な事件が題材だ。

もうこれだけで、
2000年暮れの世田谷一家殺害事件を想像する。

小説は、
まず一家4人の暮らしが長女の視点で描かれ、
次いで後に彼女らを惨殺する二人のことを描く。

そこで場面は警察に飛び、
事件発生の一報から犯人逮捕までと、
判決に至るまでを淡々と綴る。

この小説の本題は動機だ。

社会の底辺で生き、
それなりに警察の厄介になったことはあるものの、
凶悪犯罪は犯してこなかった二人が、
なぜかくも残忍な犯行に至ったか。

実際の事件でも、
マスコミは犯人の動機を知りたがる。

往々にしてそれは「心の闇」と表現されるけど。

でもこれが分からない。

金銭目的で空き巣に入ったが、
意に反して家人が在宅で気づかれ、
殺してしまおうと思い鉄棒でめった打ちにした。

捜査する側はそう言わせたいのだけれど、
当の二人にそういう明確な意識はなく、
ただ「何となく」を繰り返す。

何となく出会い、
何となく行動をともにし、
何となくその家を選んで、
何となく忍び込んだら人がいて、
何となくムカついたから殴った。

ふざけているようで、
実は一番本当の感情に出会い、
当惑する警察。

今ひとことでは上手く表現できないな。

第三者は動機を合理的な言葉に置き換えて、
事件を納得しようとするのだけれど、
これほど難しいものだとは。

時代が2002年に設定されているのは、
裁判員裁判以前にしたかったという意味合いがあるのだろう。

ぼくが裁判員になる確立が何%あるのか知らないが、
辛いなぁと正直思った。

にしても、
上下巻計600ページを費やして、
これほど執拗に茫漠たる事件の描写ができる、
高村薫って何者なんだ?

それを読んだぼくも何者なんだ?


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