鏡に映った自分を見て、
人は「これはぼくだ」と思う。
人は自分を常に省みて、
次の自分の行いを決めていくのだけれど、
鏡で自分の背中を見ることはできない。
ルネ・マグリットの「不許複製」を見て、
そんな当たり前なことを改めて思う。
自分を省みているだけでは、
人はきっと自分を客観視できないのだ。
だから人が本や映画や、
あるいは助言や忠告や、
診断や採点や、
その他「自分以外」のあらゆるものを欲するのは、
「自分は何者か」を知るためだ。
他者はすべて、
自分を映す鏡だ。
先日、
他人の愚かな失敗談を聞く会に参加した。
次々に披露される、
笑えるほど悲しい話を、
ただ黙って真摯に聞いた。
あなたがたの話はぼくを写す鏡だ。
そうだ。
あなたはぼくだ。
そう思いながら、
静かに聞いた。
0 件のコメント:
コメントを投稿