2009年10月24日土曜日

時計

 寺山修司の詩文集「思いださないで」のなかに、時計の一節がある。<時計の針が/前にすすむと「時間」になります/後にすすむと「思い出」になります…>。思えば人は、前後どちらにも針の動く時計を携えて人生を歩いている。

 つらい出来事は「後ろにすすむ」針に託し、身は「前にすすむ」針に託す。振り向けば、耐えられそうになかった悲しみもいつしか歳月の彼方に霞んでいる。針の動かない、壊れた時計をもつ人はどうすればいいのだろう。



今朝(22日)の読売新聞「編集手帳」の冒頭だ。


この後、
27年前に娘を殺されたとして容疑者を誘拐したフランス人の父親の話になり、
最後をこう締めくくる。


 誘拐も犯罪であり、父親の執念を称揚するつもりはない。ないが、47歳の人が74歳になるまで胸に抱いてきた「壊れた時計」には切ないものがある。


「壊れた時計」はつらいけど、
「壊したい時計」ってのもある。


ゲット・バック・イン・ラブ
(作詞・作曲:山下達郎)

誰もいない風の道を見つめていた朝のことを思い出して
僕らはまた、ここで出会った
薄明かりのガラス窓にいつか落ちた雨のひとすじが浮かんでいる
全てがみな、移り変わって行っても

Get back in love again もう一度僕を信じて
思い出にしたくない、あなたを……

止まらないで、過ぎた日々に残してきた悲しみの数を数えないで
あなたはまだひとりきりじゃないから

Get back in love again もう一度僕を愛して
思い出は欲しくない、あなたを取り戻したい

遠ざかる記憶でさえ奪えないものがある

Get back in love again もう一度僕を信じて
思い出にしたくない、あなたを取り戻したい
Get back in love again もう一度僕を愛して
思い出は欲しくない、あなたを…取り戻したい



1988年のこの曲が大好きだった。
当時ぼくは就職試験の勉強真っ最中。

にしても、
未練アリアリのこの歌詞。
大人の今なら「少しは前向けよ!」って突っ込みたくなる(笑)

でも「遠ざかる記憶でさえ奪えないもの」って部分は、
今でも共感する。

時間や形の具体性は薄れても、
その時感じた「想い」の手触りみたいなものは、
胸の奥にずっと残る。

0 件のコメント:

コメントを投稿

遺志

30日は親父の13回忌だ。 あーそんなになるのか、 と言うのが率直な感想。 親父が亡くなる直前、 僕は酒を辞めた。 復職して最初のボーナスが出た日、 入院していた病院に行って報告した。 もう親父はかなり弱っていて、 ほとんど喋れなかった。 でも...