
石井一男という画家を知ったのは、
去年読んだ毎日新聞の記事だった。
新開地の長屋の二階に一人住まいし、
バイトで食いつなぎながら、
細々と女神像を描き続けている、、、
そんな内容だったと思う。
地蔵のような顔の絵と、
清貧な暮らしぶりに感銘を受けた。
その石井氏をとりあげた、
「奇蹟の画家」(後藤正治著、講談社)という本を知ったのは、
立ち読みした週刊文春の書評コーナーだった。
いや正確には、
その本の存在は前から知っていたのだが、
その「奇蹟の画家」が「あの」新聞記事の画家であることに、
その時初めて気付いた。
さらに驚きだったのは、
無名だった石井氏を「発掘」したのが、
海文堂という書店の前社長だったということ。
そう、
元町に行くと決まって立ち寄る、
お気に入りの書店だ。
感銘を受けた画家と、
行きつけの書店とが、
一つの書評で結びついたのだ。
海文堂という書店は、
一見普通の本屋に見えるのだが、
意外に硬派な本が揃えられている。
神戸に関する本も多い。
二階に上がる階段の踊り場には、
巨大な船の舵輪が飾られていて、
絵画の個展も度々開かれている。
ただの書店ではない。
きっ一家言ある店主に違いないとは思っていたが、
「あの」画家とそんな関係だったとは。
今日早速、
その海文堂で買って半分ほど読んだ。
石井氏と海文堂の出会いから、
氏の絵画に魅せられた人たちが、
数珠つなぎのように紹介されていく。
ぼくの頭の中で滞っていたものが、
一気に流れ始めたような、
そんな感じ。
石井氏という画家の存在もさることながら、
ぼくには絵画が取り持つ人間関係もまた、
奇蹟的に思える。
●ペンギンさんと今年初めての対面。やっと今年が始まった感じがした。
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