2010年1月16日土曜日
奇蹟
石井一男という画家を知ったのは、
去年読んだ毎日新聞の記事だった。
新開地の長屋の二階に一人住まいし、
バイトで食いつなぎながら、
細々と女神像を描き続けている、、、
そんな内容だったと思う。
地蔵のような顔の絵と、
清貧な暮らしぶりに感銘を受けた。
その石井氏をとりあげた、
「奇蹟の画家」(後藤正治著、講談社)という本を知ったのは、
立ち読みした週刊文春の書評コーナーだった。
いや正確には、
その本の存在は前から知っていたのだが、
その「奇蹟の画家」が「あの」新聞記事の画家であることに、
その時初めて気付いた。
さらに驚きだったのは、
無名だった石井氏を「発掘」したのが、
海文堂という書店の前社長だったということ。
そう、
元町に行くと決まって立ち寄る、
お気に入りの書店だ。
感銘を受けた画家と、
行きつけの書店とが、
一つの書評で結びついたのだ。
海文堂という書店は、
一見普通の本屋に見えるのだが、
意外に硬派な本が揃えられている。
神戸に関する本も多い。
二階に上がる階段の踊り場には、
巨大な船の舵輪が飾られていて、
絵画の個展も度々開かれている。
ただの書店ではない。
きっ一家言ある店主に違いないとは思っていたが、
「あの」画家とそんな関係だったとは。
今日早速、
その海文堂で買って半分ほど読んだ。
石井氏と海文堂の出会いから、
氏の絵画に魅せられた人たちが、
数珠つなぎのように紹介されていく。
ぼくの頭の中で滞っていたものが、
一気に流れ始めたような、
そんな感じ。
石井氏という画家の存在もさることながら、
ぼくには絵画が取り持つ人間関係もまた、
奇蹟的に思える。
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