
お金は汚い物だと聞かされても、
こどものころのぼくは、
意味がよく分からなかった。
いまは文字通り、
お金は汚いものだと想像できる。
何十年もの間、
ありとあらゆる人の、
手から手へ渡ってきた物が、
汚くなくて何だろう。
潔癖症のある人は、
電車のつり革さえ持てない、
という話を聞いたことがあるけど、
お金はどうだろうか。
手垢にまみれた硬貨の製造年が、
自分の生まれ年だと気付き、
よくもまぁ長い間、
こいつも生き延びてきたもんだ、
妙に愛おしく思えることがある。
でもそのお金にもし記憶があって、
それをのぞき見たら、
きっと即座にぶっ倒れるだろう。
お金が汚いという意味と同じで、
言葉も汚い。
言葉には実体はないけれど、
やっぱり、
ありとあらゆる人が使ってきたのだから、
手垢にまみれた汚いものだ。
汚い言葉だけでじゃなく、
きれいな言葉だって汚い。
にもかかわらず人間は、
その言葉を使って生きるしかない。
潔癖症の人だって、
それは同じだろう。
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