先日発表のあった芥川賞と直木賞の新聞記事を、
会社の後輩の女性社員が切りぬいている。
前にクリスマスケーキの一件で、
印象的なお礼の言葉をくれた彼女だ。
イマドキ新聞の切り抜きなど珍しいを事を、
と理由を尋ねると、
「私の知り合いなんです」と意外な返事。
「え、どの人」
「この人です」と彼女が指さしたのは、、、
右から二人目の、
小太りのおっさん。
「苦役列車」で芥川賞に輝いた西村賢太43歳。
ぼくはたぶん、
右端の朝吹真理子が後輩とかなんとか、
そんなとこを予想していただけに、
一番意表を突かれる回答。
さらに続く彼女の言葉に、
ぼくはひっくり返りそうになった。
「この人と6年間文通してるんです」
はぁ。
ブンツウ‼
死語だろ。
なんでも、
フトしたことで知り合いになり、
以来ずっと手紙のやりとりだけの「付き合い」を続けているらしい。
「授賞した時電報を打とうと思ったんですけど、当日配達は7時までなんですね」
「じゃあ電話すればいいじゃん」
「いや、ホント、住所しか知らないんです。携帯持ってないんじゃないですかねぇ」
彼女の口から発せられる言葉の一つ一つが、
予想外すぎて、
開いた口がふさがらないとはまさにこのこと。
だって、
ぼくは西村氏の作品は読んだことないけど、
相当に破天荒というか、
破滅的というか、
かなり危険な「異端児」。
酒と女におぼれるスキャンダラスな、
駄目駄目フリーターだということぐらいは、
ニュースで知っていたからだ。
ぼくから見れば、
西村氏とは対極にある可愛らしい雰囲気の彼女が、
このおっさんと文通してるということが、
まったくアンリアル。
「でも、やっぱり文章とか上手いですよ」
相変わらず飄々と続ける彼女。
ぼくは「君も相当おもろいな」というのが精いっぱい。
そして彼女の駄目押しの一言。
「授賞式で、もうちょっとで風俗に行ってしまうところだったなんて、あんな事言わなきゃいいのに。でも私、大器晩成型の人に魅かれるんですかね」
白旗。
無条件降伏です。
人は見かけによりません。
しかし、
この時代、
6年間も文通だけなんて、
ある意味、
友人とか親族より「濃い」関係だと言えやしないか。
文通の内容とかは、
さすがに聞くのがはばかられたけれど。
事実は小説より奇なりとはまさにコレ。
意外なところで人は人に魅かれるようだ。
すごい生々しい人間の不思議を、
教えてもらった。
できうれば、
ぼくも彼女に興味を持ってもらえるような、
「大器晩成人」でありたいと、
切に願った。
●西村氏の著作をアマゾンで即注文したのは、言うまでもない。
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