2011年5月23日月曜日

手軽

夜勤帰りのタクシーで。
昨秋にうちの部署に来た後輩と相乗りになった。

初めて(だと思う)。

その彼に「どうすれば仕事を早く覚えられるか」と尋ねられ、
しばしうなった後こう答えるしかなかった。

「言葉とかマニュアルで教えられるものは1割ぐらいしかないからなぁ」

とっさに口にした言葉は本音というより、
ぼくの願望に近い。

「この仕事はそういうものであって欲しい」と。

でも実際は逆で、
仕事の9割までは言葉やマニュアルで教えられるのかもしれない。

たとえそうであったとしても、
残る1割こそが「隠し味」であって欲しい。

「何でですか」と聞かれても、
「うーん何となく」としか答えられないような、
でも限りなく本質的な部分って間違いなくあると信じる。

一本の線のように説明できるものではなく、
網のようにブワっと広がる思考が。

でなきゃ12年も苦労してきた甲斐がないじゃないか。

いや待てよ。

最近は、
言葉やマニュアルで理解できるように、
仕事の方が変わってきているような気も、、、

これまでこだわってきた、
あるいはこだわるように教えられてきた種々の約束事が、
少しずつ取り払われ、
新人君でも何となく格好はつくように、
仕事の枠組みというか質というか、
要するにハードルが下げられてきている気がする。

それがユーザーにとって、
全く問題ないのなら良いのだが、
結局は出来あがった製品までも、
お手軽で薄っぺらなものに変化してきているとすれば、
看過できない。

これはつまり、
うちの新人君の悩みを超えて、
世の中の「合理化」というものに潜む問題ではあるまいか。

コンピューターに人の肩代わりをさせ、
リストラを進める企業。

契約社員やアルバイトを安値で雇い、
マニュアルを覚えさせて、
手軽に黒字を増やしてみたところで、
結局は製品やサービスの質は落ちているのでは、
本末転倒である。

お手軽に作られたものは、
外見は変わらなく感じられても、
絶対に何か重要なモノが抜け落ちているはずなのだ。

そのことに、
作り手もユーザーも気が付かないことが、
一番恐ろしい。

●最近の政治家の薄っぺらさにも通じるように思うのだが、、、

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