2011年7月23日土曜日

被曝

格子状に張り巡らされた光線が、
兵隊の体を一瞬で通り抜ける。

直後は、
何の変化もないように見えた兵隊。

が、
その直後、
彼の体はバラバラの細切れ肉になって崩れ落ちる。。。

映画「バイオハザード」の一場面を、
「朽ちていった命ー被爆治療83日間の記録ー」(新潮文庫)を読んで、
思い出した。

1999年に起きた東海村JCO臨界事故といって、
みなさんピンとくるだろうか?

核燃料を作る作業中に、
原料のウラン溶液が誤って臨界反応を起こし、
作業員2人が死亡した事故だ。

そのうちの一人、
大内久さん(当時35歳」の、
壮絶な記録である。

臨界現場の最も近くにいた大内さんは、
猛烈な中性子線を浴びたのだが、
病院に搬送された当初は、
外見は手に日焼けをした程度の赤みが見られたほかは、
特に大きな変化はなく、
会話も普通にできて、
とても致死量の被曝をしたようには見えなかったという。

でもこの時すでに、
大内さんの染色体は中性子線でズタズタに切り裂かれていた。

染色体が崩壊しているということは、
体の「設計図」がなくなっているということで、
つまり、
細胞が死んでも新しい細胞が作り出せない、
簡単にいえばそういう状態だったのである。

83日間にもわたって彼が延命できたのは、
当時として考えられ得る最高の対処療法をしたためであり、
彼の運命は、
臨界で中性子線を浴びた瞬間に決まっていたといっていい。

福島原発事故と同列に並べて考えることはできないが、
「被曝する」ということが一体どういうことなのか知るうえで、
一読に値すると思う。

この本の著者は、
『NHK「東海村臨界事故」取材班』。

元々はテレビドキュメントで、
YouTubeでも見ることが可能だ。

制作者と、
取材を許可した大内さんの家族に敬意を表する。

http://www.youtube.com/watch?v=pYB58P3t_Hs&playnext=1&list=PL3D78CD7FC6C57CA8

●先日紹介した「原発のウソ」著者の小出裕章氏の講演はこれ。http://www.youtube.com/watch?v=4gFxKiOGSDk&feature=related

0 件のコメント:

コメントを投稿

遺志

30日は親父の13回忌だ。 あーそんなになるのか、 と言うのが率直な感想。 親父が亡くなる直前、 僕は酒を辞めた。 復職して最初のボーナスが出た日、 入院していた病院に行って報告した。 もう親父はかなり弱っていて、 ほとんど喋れなかった。 でも...