出勤前、
いつものようにドトールで一服していたら、
横から手が伸びてきて、
机上の百円ライターを持って行った。
ビックリして手の持ち主を見ると、
どう考えても20歳代の女性。
「貸してください」とでも言ったのかもしれないが、
ぼくはイヤホンをしている。
言っていたのだとしても、
かなり強引だ。
でも別にいいやってほっといたら、
一応「どうも」って感じで返してきた。
それで終わりかと思いきや、
再び手が。
またかよ、
と内心思いつつ黙っていると、
今度はなかなか返ってこない。
見ると女はライターの火で、
バッグの何かを溶かしている。
まったく不可解なのだが、
それでもほっておくと、
やっと返してきた。
「先焦げちゃった」
女はそう一言。
ライターを変な向きにしていたから、
先端が焦げたのだ。
本当ならば、
ここは怒るところなんだろうけど、
不思議と怒りの感情が湧かない。
ただただ呆気にとられた。
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