「原発ホワイトアウト」(若杉冽著、講談社)を読んだ。
福島原発以後の日本を描いた小説。
著者は東大法学部出身の現役の官僚ということだけど、
もちろん匿名。
でも中身はメチャクチャ面白かった。
というより恐ろしかった。
電力会社がどのように政治と関わり、
持ちつ持たれつの関係になっているか。
小説に登場する人物や原発名は全部仮名になっているけれど、
読めばすぐに実在のだれを指しているかわかる。
再稼働に向けて全力を傾ける電力会社。
阻止しようとするジャーナリスト。
小説では、
再稼働に慎重な新崎県の伊豆田知事が国策捜査で逮捕される。
そしてその新崎県の新崎原発がテロに遭って、
再びメルトダウンを起こす、、、
小説というより、
小説のプロットというような、
荒削りな内容だけど、
それだけに妙に生々しいというか、
現実ってそういうことなんだろうなぁと、
想像するには十分な内容だ。
たとえば、
国会周辺で盛んだったデモ行進。
あれだって、
首謀者を尾行して、
微罪で逮捕したり、
参加者の近所を警官が訪問して、
あそこの誰それさんはどんな人物か、
とかやるだけで、
もう怖がって参加しなくなる、
みたいな。
電力と国家権力が結託すれば、
この国の世論を誘導することなど、
実に容易いのだと思い知らされる。
そういえばちょうど先日、
Nスペで「原発テロ」というのをやってた。
あんなのも、
一般向けのプロパガンダだろう。
だから原発再稼働は大丈夫です。
でも現実問題として、
日本中の原発をテロから守るなんて不可能だと思う。
この小説でのテロは、
豪雪に見舞われた新崎原発への、
送電線を爆破するというもの。
原発本体を襲わなくても、
原発を無電源状態にしてしまえば、
簡単にメルトダウンを起こすことは、
もう日本国民の常識。
そういえば以前、
四国で高圧線鉄塔のボルトが抜かれるという、
奇怪な事件があったな。
その気がある人間にかかれば、
原発はいとも容易く崩壊させられる。
別にミサイルはいらない。
そしてこの小説が一番怖いのは、
2度目のメルトダウンが現実になってなお、
電力会社は早速再稼働へのシナリオをねりはじめる、
最後の部分だろう。