山田風太郎という作家の名前を初めて聞いたのは、
大学生の時だった。
教室で知り合った女学生から、
好きな作家はだれかと聞かれ、
ぼくは「開高健」
と答え、
その時彼女は「山田風太郎」と答えたのだ。
ぼくはその時、
全く名前を知らず、
「ふーん」と言ったか言わなかったか、
そんな程度の反応だったと思う。
それからも、
ずっとこの山田風太郎という名前は、
気にはなっていたけれど、
ついにあれから30年、
一冊も読む事はなかった。
それが、
ひょんなことから手にした「太陽黒点」。
これには驚愕した。
恐るべき洞察力というか、
人間心理の描き方が尋常じゃない。
若者の心理。
中年男の心理。
戦中派の心理。
戦後派の心理。
昭和30年代の東京の、
社会の雰囲気というものが、
手に取るように伝わってくる。
考えてみれば、
この本を20歳そこそこで読んでも、
あんまり感心しなかったかもしれない。
今の年齢になったからこそ理解できる、
恐ろしさというか、
おぞましさというか。
ちなみに刊行されたのは、
ぼくが生まれる前年。
角川文庫629円。
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